取扱い天然石解説
ロードクロサイト
- 鉱物名
- ロードクロサイト(菱マンガン鉱)
- 宝石名
- インカローズ
- 主要産地
- アルゼンチン・カタマルカ州
ロードクロサイト(インカローズ)宝石名の由来
まずロードクロサイト(菱マンガン鉱)とは鉱物名であり、インカローズとは特定のロードクロサイトのみを指す宝石名であるということ。
このインカローズですが、一般的な見解では「ロードクロサイトの多くがかつてインカ帝国の栄えた地域から産出するため、それに因んでインカの薔薇と呼ばれるようになった」というところだと思います。
大まかに正しいのですが、厳密には「現アルゼンチンの、インカ帝国の時代から稼働していた鉱山で採れる、鍾乳石状に成長し、スライスすると断面が薔薇の花のような同心円状の模様があるロードクロサイトのこと」です。
つまりインカローズと呼ばれるロードクロサイトは産地限定型であり、さらに産状限定型(それが薔薇模様の原因)と言ってよいでしょう。
尚、このインカローズという呼称ですが、1800年代前半にF.マンスフェイルト博士がアルゼンチンのカタマルカ州で見られる塊状のロードクロサイトを「インカローズ」として欧米に紹介したのが始まりだと言われております。
インカローズはロードクロサイトですが、ロードクロサイトの中でも上記条件を満たしたもののみがインカローズと呼ばれます。
すべてのロードクロサイト(鉱物名)=インカローズ(通称)ではございませんので要注意です。
ややこしいので当店では商品名として「ロードクロサイト(インカローズ)」と記載しております。
ロードクロサイト(インカローズ)の歴史と解説
アルゼンチンの西部、アンデス山脈東側にあたる地域には銅の鉱床が広がっており、インカ帝政時代の13世紀頃よりインカローズの一大産出だったそうです。
この地域のロードクロサイトは低温の熱水溶液から沈殿して形成された塊状(コロフォーム)であり、鍾乳石状に生成・成長します。
この鍾乳石状をスライスすると同心円状の層状模様が見られるわけで、これこそまさにインカの薔薇なのです。
カタマルカ州アンダルガジャ郡カピジータス鉱山はインカ時代から続く鉱山であり、ここで採掘される赤い石はインカの人々を魅了しました。
彼らはこの鮮やかな赤色はインカの支配者たちの血が石と化したものだと考えており、聖なる力を秘めていると信じていたと言います。
しかしインカローズの鉱山はインカ帝国が支配力を失うとともに放棄されてゆき、再び陽の目を見ることになるのは第二次大戦頃になります。
その後はかつての鉱山が再び掘り起こされると共に活発な再稼働が始まりました。
かつてインカの人々を魅了したように現在の我々もインカの地の赤い薔薇に魅了されているのです。
では話を少しロードクロサイトに戻しましょう。
ロードクロサイトですが、主に金属鉱床の熱水鉱脈にて比較的低温下で生成することがわかっており、世界中の金属鉱床で産出が確認されております。
工業価値のある金属を採掘する際の副産物として産出する例が圧倒的に多いといえるでしょう。
美しいピンク色はマンガンイオンによるものですが、マンガンの含有量により濃い赤色から紅色、ピンクや白といった色相を見せます。
赤みが強くなるほど価値が上がる傾向にあります。
産出形状も実に様々で単結晶としての菱面体、犬牙状、塊状としての葡萄状、同心円状といった姿を見せてくれますが、日本名の如く綺麗な菱型の単体結晶は目を見張るものがございます。
そういった希少な標本は主に鉱物蒐集家にコレクションされます。
前期の通り金属鉱床と相性の良いロードクロサイトは世界各地で産出があります。
世界中のコレクターが求めるアメリカ・スイートホーム鉱山はあまりに有名ですし、北海道余市のマンガン鉱床でかつて産したロードクロサイトはマニアの間で涎垂です。
近年では南アフリカや中国産の標本も見かけるようになり大いに市場を賑わせております。
これらのロードクロサイト標本がインカローズとは呼ばれないのはご存じの通りです。
シャンバラストーンズで取り扱う菱マンガン鉱は菱マンガン鉱の中でもインカローズと呼ばれるものになります。
以下グレーディング等の記述もインカローズを対象としておりますのでご了承下さい。
ロードクロサイト(インカローズ)の真贋?(天然と人工処理)
インカローズの偽物、という話はあまり聞きませんがロードナイト等の類似石と混同される可能性はあります。
薔薇模様(ビーズでは層状縞模様に見えますが)のあるインカローズになると素人目でも判別しやすいかと思いますので、真贋を過剰に疑う必要は無いでしょう。
またインカローズは加熱・含浸・コーティング処理などをしなくても充分に美しい天然石です。
かつ非常に脆く弱い石でもありますので処理や人工的な加工に耐えられないという話を専門機関から聞いたことがございます。
類似の石をロードクロサイト(インカローズ)と謳っている紛い物はあるかと思いますが、処理を施されたロードクロサイト(インカローズ)は少ないのかもしれません。
ロードクロサイト(インカローズ)のグレード評価基準
グレード基準として色が濃いこと、ガラス質の透明感が強いことが大いに影響します。
いわゆるインカローズにおいては真透明になるということは無いので、半透明の中でも透け感の強いものほど評価が高く、かつ色が濃ければ濃いほど価値も上がります。
赤みが強い紅色で透明感があるというのが理想的なのですが「色の濃さ」と「透明度」は必ずしも共存するわけではありません。
透明度が上がるほど(透過するほど)色は薄く見えるものであり、透けないものほど色が濃く見えるものです。
単色の赤から紅色が最もよく、次いで濃いピンク、質が落ちるとホワイトが強くなり、安価なものは層状縞模様が見られます。
しかしこの層状縞模様はロードクロサイト(インカローズ)らしさであり、これを好む人もおりますので安価=悪いというわけではありません。
余談ですが、この層状縞模様のあるロードクロサイトは欧米ではベーコンストリップと呼びます。
確かにベーコン…ところ変われば食文化も変わり、比喩が変わるのは鉱物を調べている上でとても面白いですね。
多くの方はインカローズというと縞模様の不透明石を想像します。
単色半透明のものは決して多くないので当店グレード★7以上のものだと皆様なかなかに驚かれます。
ロードクロサイト(インカローズ)着用・取扱いの注意点
販売しておいておかしな話ですが、インカローズは着用に最も適さない天然石のひとつと言えるでしょう。
インカローズは硬度4と非常に柔らかく、傷つきやすい上にへき開性にも富むためとても脆弱です。
加えて水分や酸性成分に弱く、それらに晒されると表面がザラザラとなり光沢感も失われます。
以上の事を考慮すると直接肌に触れる上に衝撃を被りやすいブレスレットは相性最悪です。
今のところシャンバラストーンズではブレスレットの販売はしておりません。
もしも今後どうしても良いビーズを見つけてしまったら仕入れてしまう可能性もありますが、その際は勝負時・自慢したい時程度に着用するようにし、主に観賞・コレクション用とする事をお勧めいたします。
申し上げにくいのですが、身に着けない方が賢明です。
ペンダントに関しては、すべてのペンダントが直接肌に触れないデザインで制作しております。
こちらはある程度気をつけていれば身につけている際の劣化・ダメージも極端に気にする必要は無いでしょう。
ということで皆様、ペンダントを買いましょう。