取扱い天然石解説
ラリマー
- 鉱物名
- ペクトライト(ソーダ珪灰石)
- 宝石名
- ラリマー、ドルフィンストーン
- 主要産地
- ドミニカ共和国Barahona州
ラリマー宝石名の由来
カリブ海の海の色の如き鮮やかなブルー。
あまりに鮮明で眩しいブルーはそれが人工的な着色では無いかと疑いたくなるほど。
「ラリマー」は宝石としての通称であり、鉱物としてはペクトライト(ソーダ珪灰石)に属します。
ペクトライト自体は世界中で産出しますが、カリブの至宝と称される青いペクトライトはドミニカ共和国のバラホーナ州、パオルコ山脈周辺でしか確認されていません。
この「ラリマー」という名前ですが由来はあまりに有名ではないでしょうか。
発見者であるミゲルメンデスの愛娘の名前であるラリッサ(Larissa)とスペイン語で海の意味であるマール(mar)を組み合わせてLarimarなのです。
ラリマーの歴史と解説
ラリマーですが宝石としての歴史は比較的新しく、この石が「再」発見されたのは、1974年のこと。
アメリカ人ピースコープボランティアのノーマンリダースとドミニカ人ミゲルメンデス率いる研究チームによるものだと言われております。
再発見とされる所以は、それ以前から原住民の間では青い石の存在が囁かれており、1916年にはスペイン人宣教師がターコイズのように見える石について言及しているからです。
残念ながらその当時は鉱山の発見から採掘には至らなかったようですが。
あまりに美しいカリブの至宝はその後ヨーロッパで人気の階段を駆け上がり、現在に至るまでドミニカ共和国のみで市場に供給を続けております。
今では州や国を挙げてのバックアップ体制もあり、鉱山を巡るツアーなども盛んに行われております。
ラリマーをラリマーたらしめる美しい青色ですが、これはカルシウムから転換した酸化コバルト(鉄族元素)の色だと考えられます。
ラリマーは安山岩や玄武岩の亀裂を埋めるようにして生成しますので、塊状・脈状で産出します。
地中深くにラリマーの鉱脈があり、蟻の巣のように坑道を掘り進めるのですが鉱脈に近くなるほどあたりは水色になるそうです。
しかし採掘の作業は困難かつ危険を伴うようで、雨期になると縦穴は水没してしまうそうです。
土砂崩れなどで鉱夫が生き埋めになったとの噂も絶えないのだとか。
さてこのラリマーですが、上記の通り塊状・脈状で産出します。
その為、我々が目にするものはほとんどがカット研磨され、カボションペンダントやブレスレットなど宝飾品となっているものになります。
(稀に鉱物収集家のための玄武岩に包まれたままのラリマー原石なども見かけますが)
現地ではラリマー鉱山ツアーなどもございますが、鉱山に赴いたから必ずしも良質なラリマーが手に入るわけではございません。
ほとんどの場合、良質なものは提携のある(資金源である)業者に原石のまま引き渡され、中国でカット加工されて香港の市場から出回ります。
2000年代後半ごろは一時期産出の減少なども囁かれ、ちょうど世界的なパワーストーンブームも相まって値段が高騰した時期もありました。
しかしあくまでもシャンバラストーンズの仕入れの感触ですが、ラリマーはいわゆる「希少石・レア石」の中では随分と安定しているのではないかと思っております。
価格の乱高下もさほどあまりありませんし、供給としても安定しております。
ある程度の質であれば(★8つ程度までであれば)比較的いつでも手に入るように思えます。
(もちろん取引先が良いから、ということもあるかもしれませんが、むしろ年々良いものが出てきているようにも感じます)
とはいえ最高質に近いものは依然として希少であることには変わりありません。
とくにラリマーは質の差が色に如実に表れます。
低質〜中質程度であれば安価で市場に溢れかえっているでしょう。
ビビットで鮮明な色や、美しい亀甲模様、半透明な透けるラリマーなどは決して安くはないということは知っておいてください。
またラリマーの色は写真で確認しにくく(写真の加工も行いやすいです)、本当に良いものを求める際は現物を確認して比較することを強くお勧めします。
ラリマーの真贋?(天然と人工処理)
産出量のある石は偽物が作られにくいので、ラリマーに関しては完全なる偽物は多くはないと思われますが存在はするようです。
着色されたハウライトやその他の石がラリマーとして販売されているとのこと。
そもそも着色であのラリマーの美しい亀甲模様や鮮やかなカリビアンブルーを出すのは難しいと思いますので、明らかにそれが偽物とわかってしまうのではないか、というのが私見です。
また、私自身は見たことがございませんが表面をコーティング処理されたものの話も聞かれます。
コーティング処理とは表面のスクラッチや傷を隠すため(また艶やかに美しく見せるため)表面を透明のガラスやケミカル、樹脂などで覆ってしまう処理です。
強度を上げるという意味ではコーティング処理も理解できますが、最終研磨をすればラリマー表面は処理などしなくても艶やかで綺麗です。
わざわざ処理をする意図がわかりません。
どこまでの処理石が出回っているか、掴みかねている状況です。
※表面コーティングの有無や着色はさしたる鑑別機関で100%判別可能です、ご自身のラリマーが気になる方は鑑別してもらいましょう。
ラリマーのグレード評価基準
ラリマーの評価において最も重要な要素は色です。
眩しいほどに鮮やかな青色が最もよく、言葉での表現は難しいですがカリブ海の色の如く青が抜けているものが良いです。
濃くなくても水色が鮮やかであるものも評価が高く、グレードが落ちるにつれて白みが増してゆきます。
また、ラリマー特有の亀甲模様も評価の要点であり、美しい亀の甲羅模様が出ているものや霜降り肉のように変わった模様が出ているものも評価されます。
質が落ちると著しく色の鮮やかさが低下することと共に黄色味を帯びてきます。
黒点や赤点の不純物、亀裂など見られるようになります。
この黒点や赤点はラリマーにとって大きなマイナスです(つまり良質には黒点や赤点が見られません)
数年前に少し市場を沸かせた「アイスラリマー」ですがこちらもグレードにおいては注意が必要です。
半透明でやや透けるラリマーを指してアイスラリマーと呼ばれるようになりましたが、カルセドニーのように単色で鮮やかな水色であれば非常に高く評価してよいでしょう。
しかしほどんどの「アイスラリマー」は白が透けているだけで著しく質に劣ります。
白が透けているだけのラリマーは当店では高く評価しておりません。
ラリマー着用・取扱いの注意点
主に宝飾品として販売されるラリマーですがこの鮮やかなカリビアンブルーは身に着けてこそですね。
特に夏場には清涼感を与えてくれる素晴らしいジュエリーとなります。
しかしラリマーも取扱い・着用時には若干の注意が必要です。
ラリマー着用の上で特に注意すべきは表面のスクラッチです。
ラリマーの表面は非常に傷つきやすく、ブレスレットの場合は腕時計との併用は厳禁です。
龍頭等の金属部分がラリマーにスクラッチ傷を与えてしまいます。
出来れば他のブレスレットとの2本着けも控えめにした方が良いです。
表面に無数のスクラッチ傷ができると艶感や照りが失われ、ザラザラとした手触りになります。
また研磨をすれば元に戻りますが、研磨の機材はどこにでもあるわけではございません。
しかし日常着けているだけならばペンダントもブレスレットも大量のスクラッチ傷を受けてしまうようなことはないでしょう。